前回は、SNSの投稿にはリンクが無い場合がある、ということをお伝えしました。リンクがなければ、商品を紹介しても商品ページには誘導できません。SNSは商品を口コミしてもらうための有力なメディアではありますが、ECサイトへの導線が無いのは困りものです。

リンクがない、ということと似ていますが、SNSで投稿をシェア、リツイートできる機能も、商品の口コミを広げるためには大切な機能です。こちらもSNSによってできる範囲は異なります。今回はこれらのリンクやシェアの機能とECについてまとめてみたいと思います。

投稿リンク/シェアの有無はSNSの個性

SNSの投稿にリンク/シェアを許すか否かは、SNSの性格付けに関係しています。例えば、同じMeta社のSNSであってもFacebookではリンク/シェアを許していますが、InstagramではURLリンクはつけられません。投稿へのリンク/シェア機能があれば、気になった記事や投稿を友人に知らせることができ、便利なような気がします。

もし安易にInstagramがリンクを許容したとしたらどうでしょうか?Instagramはユーザー自身が体験した日常を写真としてコミュニティーにシェアするものですから、安易にリンクを許せば第三者の情報が流れ込んできてしまい、「自分目線」がぼやけてしまいます。SNSの性格が歪んでしまうのです。そして、リンク/シェアを許すとInstagramとFacebookの差もなくなってきます。

もう少し分かりやすくするには、Twitterと比較するとよいかもしれません。Twitterはテレビ番組の感想を投稿したり、面白いツイートをシェアする、リツイートをしたり、どちらかというと自分が出会っている体験と言うよりも、今同じ時間を共有している仲間への発信の多いSNSです。リツイートで「今自分が遭遇しているイベントをシェア」という文化です。自分では何も書かなくても今の関心事を知らせられるということに、シェア(リツイート)が一役買っているのです。

このように外部リンクを投稿に入れるか否かということには、コミュニティーで何を共有したいか、というSNSの性格が背後に存在しているのです。

このように、安易なリンクの許容は、SNSの性格をゆがめる可能性があります。しかしSNS側からすると、ECという巨大なコンテンツ/広告主を取り込みたい…そこで登場するのが、ショッパブル機能です。

世界で主要SNSが取り組むショッパブル機能拡充

ショッパブル機能というのは、SNSがビジネスアカウントに対して提供している、SNS上でのEC機能です。日本ではInstagramのショッピング機能だと思えば、とりあえずは十分です。Instagramのビジネスアカウント(正確にはMetaのビジネスアカウント)に、商品カタログと商品ページを作ることができ、投稿に商品ページへのリンクを設置することができます。また商品ページには、「ウェブサイトで見る」ボタンが設置され、ユーザーはそれを押すとECサイトの購入ページに飛ぶことができます[1]。ユーザー体験上は、SNSで見つけた商品をSNS上で購入できることになります。また投稿はアカウントに残りますから、カタログのように商品紹介投稿が溜まっていきます。

投稿にリンクが無いTikTokにも、同様にショッパブル機能が追加されました[2]。ただし、現在はイギリスや、東南アジアの一部に限定されており、日本には来ていません。TikTokのショッピング機能、TikTok Shopは、Instagramより一歩踏み込んだ機能を考えています。それはTikTok上のECコンテンツへのリンクを、さまざまなクリエーターが使えるようにしようというものです。いわば、TikTokクリエーターたちがアフィリエイターとしてTikTok Shop上の商品の宣伝ができるような機能です[3]。

TikTok上には、たくさんのクリエーターが存在します。彼らのクリエイティビティを活用すれば彼らのフォロワーに対して効果的に商品を宣伝でき、かつECでの購入を促せます。それなら、同じように、InstagramのインフルエンサーやYouTuberにもフォロワーに商品を宣伝し、ECへ誘導してほしいものです。残念なことに現状ではいずれも日本ではすぐに実施することは難しいのですが、おそらく近々利用可能になると見込まれます。

例えば、一部のアフィリエイターは既にInstagramを活用しているようです(例えば、[4]のような方法)。またYouTubeはYouTube Shoppingという機能を使ったアフィリエイト広告のテストを一部の国で行っています[5]。動画は商品の魅力を伝えるのに適した手法ではあるものの、商品へのリンクが弱く取りこぼしが多くありました。ショッパブル機能は導線強化の本命と見られているのです。

ソーシャルコマースの今後

本ブログ記事では、SNSにおける投稿のシェア/リンクの意味と、リンクの補完機能としてのショッパブル機能について見てきました。シェアの機能については多くは言及できませんでしたが、例えばTwitterのリツイート/フォローキャンペーンのような、クチコミを活用したマーケティングには欠かせない機能です。またどこかで解説ができればと思っています。

ショッパブル機能については、リンクなしのSNSにおける「ECへの導線」として重要だというだけでなく、その先にはクリエーター、インフルエンサーを活用したアフィリエイトマーケティングにもつながっていく大注目な機能だ、ということも見えてきたと思います。

ただ、SNSにおけるコマース機能は発展途上の側面があり、テスト中のサービスが中止になるケースも多く出ています[6]。しかしSNS事業者からすればソーシャルコマースはあきらめることのできないビジネスチャンスであり、必ず不具合を修正し、日本に上陸してくると思われます。

このようにソーシャルコマースには大きな可能性が秘めているショッパブル機能ですが、オペレーションの立場からするとSNSの数だけ店舗が増えるようなもので、手間が馬鹿になりません。そこで考えなければならないのがヘッドレスコマースというECシステムの考え方です。こちらについては、拙著「コマースマーケティング」を是非ご覧ください。

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【参考リンク】

[1] InstagramショッピングとはInstagramショッピングを始めるために必要なもの | Instagram for Business

[2] オンラインショップ向けコマースソリューション | TikTok for Business

[3] Affiliate | TikTok Shop

[4] インスタで実践するアフィリエイト:お金を稼ぐ秘訣7つ — マーケティング【2022年版】 – Shopify 日本

[5] YouTube のショッピング機能を利用する – YouTube ヘルプ (google.com)

[6] Facebook、インスタグラム、TikTokが ソーシャルコマース から後退した理由 | DIGIDAY[日本版]

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