Eコマースにおいては、SNSのパワーは絶大です。運営者からすれば、自社の商品を是非ともSNSで話題にしてほしいと思います。しかし、あの手この手でSNSに取り上げられるようにしますが、消費者が思い通りに商品を取り上げてくれるわけではありません。どうしても取り上げてほしい場合には、金銭などを渡してSNSに投稿してもらうことも考えられなくはないですが、これはステルスマーケティングになるため、倫理上問題となります。

それならば、正々堂々とEC企業自らがSNS上で発信し、直接消費者にアピールしてはどうか?ソーシャルコマースは、そういたSNS上でECマーケティングのことを指します。

EC企業側から見たSNSの種類

日本でスマートフォンを持っている人のほとんどは、何かしらのSNSアカウントを持っています。「通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、LINEアプリのユーザーは全世代で90%を超えるとのこと[1]。SNSは生活の一部と言って間違いありません。

さて、このように広く普及しているSNSですが、ソーシャルコマースの場としてSNSを活用する際には、いくつか事前に確認しておくことがあります。

まず、SNSと言っても、ユーザー間の情報のやり取りにいくつかのタイプがある、ということを確認しましょう。例えば、LINEの場合を見てみます。

LINEで最も使われている機能は「トーク」でしょう。友人や家族と会話をするための機能です。企業のアカウントとお友達になれば、企業からの情報を受け取ることもできますし、最近ではカスタマーセンターの窓口としても使われます。LINE版のTikTokと言えるのが「VOOM」です。使い方もTikTokに似ています。LINEの「ニュース」も利用している人が多いのではないでしょうか。お気に入りのニュースソースをフォローしておけば、最新のニュースがフィード上に次々に現れます。

実は、InstagramやTwitterにも同じような機能があります。Twitterにはショート動画機能は今はありませんが、Twitterを買収したマスク氏は、かつてTwitterが買収したショート動画サービスVineの復活を検討しているそうです[2]。

これら代表的な3つの機能は、Eコマース的な観点からはそれぞれ、CRM機能、告知機能、ブランディング(認知獲得)機能として見ることができます。理想的には、これら3つを一つのSNSでカバーできればよいのですが、各SNSには強み弱みがあり、現実的には複数のSNSを目的別に使うことになります。実はユーザー側も複数のSNSを使い分けていますので、企業側もそれに合わせていく必要があるのです。

ソーシャルコマースの生命線~URLリンク

さて、SNSの特性を整理したところで、次にどのSNSに【公式】アカウントを作るときの留意点について考えてみます。前述のSNSの機能を踏まえると、CRMの機能としてはLINEが有力ですが、商品の告知を考えると、フィードやショート動画に強いSNSも使いたいところです。若者をターゲットにするなら、InstagramとTikTokが候補に挙がることが多いようです。しかし、この2つ、実はECの観点からは致命的な機能がありません。実は、投稿にリンクが貼れないのです。

ソーシャルコマースは、SNS上でEコマースを行うことです。Eコマースを行うためには、商品ページへユーザーを誘導する必要があります。しかし、InstagramとTikTokの投稿には、誘導のためのURLリンクを貼りこむ機能がないのです。告知は出来ても誘導できず、ということです。ブランディングにはもちろんリンクが無くてもよい場合はありますが、ECとなるととても不便を感じます。

ちなみに、FacebookやTwitterではURLを貼れば、自動的にクリックできるようになりますので、このような問題はありません。

ではどうやってこの問題を克服するか?方法は二つあります。

一つは「広告」を使う方法です。広告は一見投稿のように見えますが、メッセージを表示するユーザーをフォローワーだけでなく「広告のターゲット」として自由に設定することが可能です。また、「詳しくは」「今すぐダウンロード」といったボタン、およびリンクが設定可能です。

ただ、広告は費用が掛かります。初めてのユーザーに対しては費用が掛かるのは致し方ないですが、顧客になった後はぜひフォローしてもらって、投稿で定常的にコミュニケーションを取りたいものです。しかし、投稿にはリンクが無い・・・

SNS事業者側も実はこの課題については認識しており、解決方法を準備しています。それが、「ショッパブル機能」と呼ばれるものです。このショッパブル機能については、次回以降解説します。

[1] 総務省|情報通信政策研究所|情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 (soumu.go.jp)

[2] 「Vineを復活させる?」–マスク氏がTwitterで投票を募集(CNET Japan) – Yahoo!ニュース

ソーシャルコマースやヘッドレスコマースについてさらに詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。

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