ECでは二回目の購入がとても大切。購入頻度(フリークエンシー)2回目、ということで、F2転換ともいわれています。通常、ステップメールやより高度なシナリオを組むことができるマーケティングオートメーション(MA)ツールを使って顧客とコミュニケーションを取ります。

最初の配信はいつがいい?

ステップメールやMAのシナリオの設計でまず問題になるのが、メッセージを送るタイミングです。電子メールはコストが安いので、タイミングや配信本数は気にならないかもしれませんが(月額固定のツールも多い)、LINEや紙DMの場合は従量課金なので節約も必要です。例えば、アナログ通販で1週間お試し商品を購入された方に対しては、「一回目の配信はちょうど1週間目くらいに届くように」「その前に紙DMを送るのはもったいない」と考えます。が、これは誤りです。

1週間お試しの場合、確かに1週間目は重要なコミュニケーションタイミングです。しかし、お客さんが商品に関心を持つタイミングは、その前にやってきます。それは商品を使い始めた瞬間です。化粧品の場合、最初に肌につけたときが、今まで使っていた商品との違いを感じられるタイミングです。「違い」を感じることがそのまま良い評価というわけではありませんが、期待感が高まっていることは確かです。

最初の配信は、このような「使いはじめ」をめがけて行うことが大切です。使い始めは「まだ商品が残っているので二回目購入が起こりにくい」と思うかもしれませんが、それも誤りです。腐らないものであれば、使いはじめに「良い」と感じたら多くの人が「じゃ、買っておくか?」と思うものです。実際、多くの商品で二回目購入のタイミングの分布をみると、1~3日目に最初の山が発生しています(何もしていないのに・・・)。ステップメールやMAでは、「使いはじめ」のタイミングの配信は忘れないようにしましょう。

さらに、その前にやるべきことがある…同梱ツール

使いはじめにメッセージを送るのは大切ですが、使いはじめのタイミングもお客さんによって少しずれますし、メールの開封率も高くないので見逃される可能性もあります。さて、どう対策すべきか・・・ステップメールやMAのことばかり考えていると答えは見つかりません。実は、商品を手に取るときに一番近くにいるメッセージ媒体は、同梱ツールです。

同梱ツールは、例えばサンキューレター、ブランドブックなどがそれにあたります。これらの同梱物は商品と同時に送られますから、「使いはじめ」の時には確実に手元に届いています(捨てられる可能性はありますが)。「既にブランドブックは送っているよ」という方も多いかもしれませんが、今一度「それだけでいいのか?チャンスを生かしているのか?」と言う観点でぜひ振り返りをしてください。

先ほど「使いはじめ」が最も「違い」を感じるタイミングと申し上げましたが、「違い」が「これは良い兆候だ」と確信するかどうかは別の話です。そこで、同梱ツールには、「違い」は「商品の良さ現れ」であることを確認してもらうような仕組みを入れてほしいのです。

例えば、お菓子などの食品の場合、お客さんに感想を聞くと「おいしい」と一言だけ返ってくることがほとんどです。「どこが」「どういう風に」といったところまで答えてくれるお客さんはほとんどいません。そこで、「しっとりしますでしょ?それはこだわりのバターを使っているから」とか「程よい甘さでしょ?それは砂糖ではなくフルーツの甘さです」などなど(適当なこと書いています)、美味しさの特徴を言語化し、それを下支えしている商品特徴を伝えることで納得感が出てきます。

このように漠然と「違い」を感じているお客様に、商品を評価するための具体的な言語情報を届けるのは、同梱ツールが最も得意とするところです。なぜなら商品と一緒に送られてくるから・・・。ブランドブックは、ブランドの世界観を伝えることを主眼としていることが多く、このような説得のコンテンツは、使い方マニュアルやユーザーボイスに入れていることが多いように思います。

アナログの強みを活かそう

同梱ツールのもう一つの得意技は、ECショップの取り扱い商品の全体像を見せることです。ECで商品を選ぶ場合、ほとんどの人は検索をして探します。これは目的の商品を探すには効率は良いものの、ついで買いをしてもらうにはちょっと不都合です。

カタログショッピングは、カタログを見ながら何を買うか決めますから、いろいろなカテゴリーの商品を眺めて、いろいろな商品を選び、まとめて注文します。ECにはそういう商品を網羅的に見せる機能がほとんどありません。結果、お客様は自分の購入した商品以外のカテゴリーの存在を知らないままになります。

同梱ツールはECにおいて、数少ないアナログな顧客接点です。紙でショップの品ぞろえを網羅的にアピールできるチャンスです。分厚いカタログはコストが掛かりますが、ショップの代表的な商品たちを並べる程度の冊子ならそれほどコストはかかりません。次にECサイトに来訪したときに、ついでに覗いてもらえるきっかけとなればよいのです。

ECの課題はテクノロジーで解決しよう、と考えがちですが、商品は実体のあるアナログですし、商品を送る際の同梱ツールもアナログです。それなら、アナログのチカラを最大限引き出す、という発想で同梱ツールを見直してみるのも悪くないでしょう。 (了)

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