このページでは、日本マーケティング協会九州支部発行の「九州マーケティング・アイズ」2024年1月号掲載の、「ECとD2Cの現状と展望」の注釈を掲載しています。本編で掲載されているデータの出典や、補足コメントなどを記載しています。

[1] 経済産業省は、企業及び消費者における電子商取引利用の発展・拡大による経済社会の変化や影響等を分析するため、平成10年度(1998年)より「電子商取引に関する市場調査」を毎年実施しています。

経済産業省 「電子商取引に関する市場調査」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.html

[2] 以下の資料に各国のEC化率が掲載されています。ちなみにこの資料では日本のEC化率は12%とされています。

日本貿易振興機構(JETRO)ビジネス短信 “米小売市場のEC比率は世界6位、年内に売上高1兆ドル超えの見込み、米民間調査” 2022年8月9日.  https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/08/f6b5f5335d8b41c2.html

[3] 既にiPhoneについて3PCは制限されています。Chromeについても24年には3PC制限が掛かると見られています。

日本経済新聞 “サードパーティークッキー廃止へ ネット広告効果半減も” 2023年11月27日. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC168XY0W3A111C2000000/

なお、3PCは以下の図のように、ユーザー(ブラウザ)からページリクエストが発生したときに、3PC用のサーバーからクッキーが発行され、ブラウザに格納されます。iPhoneではこのクッキー取得を制限しています。

3PCの仕組み

[4] マーケティングに登場するファネルについては、各社それぞれ流儀があります。電通のデュアルファネルモデルでは、獲得のファネルを「認知」「興味・関心」「検討」「購買」と分類しています。

電通報 “デュアルファネルの「外」の世界” 2022年3月3日.   https://dentsu-ho.com/articles/8100   

[5] 検索連動広告では、検索語を指定し入札を行います。自社のブランド名のように自社の商品に関わる検索語を「指名系ワード」と呼ぶことがあります。これら指名系ワードを検索しているユーザーは、既に商品を知っていて、かつ調べようとしている状態だと推測され、「検討層」であるとみなすことができます。

[6] 顧客の生涯価値(Life Time Value, LTV)を最大化するためには、顧客にブランドを好きになってもらう必要があります。SNSが発達した昨今では、購入前でも潜在顧客とつながる手段が多くあり、それを活用しようというのがマイルドCRMです。

脱3PCで注目高まるマイルドCRM

Transformation SHOWCASE powered by dentsu Japan “SNSから始めるCRM?電通グループが目指す顧客満足を高める「マイルドCRM」とは” 2023年5月24日. https://transformation-showcase.com/articles/359/index.html

[7] 既にiOSにおけるCPM(広告1000回表示の単価)の平均は、Androidに比べ大幅に低いという報告があります。

メディアハッカー “webメディア関係者必読!iOS14のアップデートは広告収益にどう影響したの?” 2021年2月12日. https://fourm.jp/web/ios14/

[8] 3PCの代替ターゲティング技術としては、例えば、The Trade Deskが開発したオープンソースIDであるUnified ID 2.0や、グーグルが提供を始めているPrivacy Sandboxなどが挙げられます。また、サードバーティーにデータを管理させるのではなく、自社ECのデータを暗号化し、グーグルやアマゾンのデータと突合し分析しようというデータクリーンルームも話題です。これらの技術の多くは、ログイン時のユーザー情報を使うためログインしていない状態のユーザーには使えない、など3PCに比べ強い制限が掛けられています。なお、それぞれの技術に関しての開設は、例えば以下のURLから見ることができます。

Exchange Wire JAPAN “Unified ID 2.0がIDソリューションの業界標準となるまでの布石とは[インタビュー]” 2023年4月7日. https://www.exchangewire.jp/2023/04/07/interview-thetradedesk-unified-id-2-0/

DAC “ゼロ知識の人でもわかる!Googleが提唱するCookieレス対策「Privacy Sandbox」とは?” 2021年8月26日. https://solutions.dac.co.jp/blog/googleprivacysandbox_0826

電通報 “LINE、トレジャーデータ、電通が語るデータクリーンルームの役割” 2022年5月31日. https://dentsu-ho.com/articles/8203

[9] アマゾンの日本の売り上げについては、正式にはドルで発表されており、成長率は約6%となっています。これを円換算すると、20%を超える大きな数字となります。

ネットショップ担当者フォーラム “【EC売上ランキング2023年版】1位アマゾン、2位ヨドバシ、3位ZOZO、4位ヤマダHD、5位ビックカメラ、6位ユニクロ” 2023年10月16日. https://netshop.impress.co.jp/node/11447

[10] 楽天市場はアマゾンと競争する上で、配送品質の向上に力を入れています。Amazonは独自の配送センターを持ちますが、楽天の場合はショップの協力が必要であり、「39ショップ」(3900円以上の買い物で送料無料)といったショッププログラムを中心に対応しています。

ネットショップ担当者フォーラム “【楽天の常務に聞く2023年の戦略】流通総額10兆円をめざす戦略、配送品質の基準を満たした商品へのラベル付与、OMOは?” 2023年10月16日. https://netshop.impress.co.jp/node/10753

[11] アマゾンのグローバルでのGMVについては以下で推定されています。

Statista “Global gross merchandise volume (GMV) of Amazon from 2018 to 2021, by seller type” https://www.statista.com/statistics/591317/amazon-gross-merchandise-value/

ちなみに、日本では、売上は約3.2兆円。この売上にはAWSや広告事業も含まれている一方で、セラーについては手数料しか含まれていないので、日本のアマゾンのGMVが一体いくらくらいかは正確なところは分かりません。一方の楽天は、GMVは5.6兆円と発表されています[10]。日本のB2CのEC規模(物販、サービス、コンテンツ合計)が22.7兆円[1]、仮にアマゾン(売上)、楽天(GMV)の合計を見ると、実に日本のECの4割近くがこの二つのPFを介しているということが分かります。

[12] ファンケル、サントリーウェルネス、など通販企業の多くも、アマゾンや楽天に出店を行っています。最近では、世田谷自然食品が楽天に出店したことが報道されました。

ECのミカタ “世田谷自然食品が楽天公式ショップをオープン Amazonに続き、顧客の利便性追求と同時に転売を抑制する” 2023年11月30日. https://ecnomikata.com/ecnews/41169/

[13] アナログで接客をしてきた通販企業も時に顧客を失うことがあります。例えば「定期コースで顧客とつながりができている」と油断していると、定期解約後にお客様が戻ってこないといった現象が起きかねません。詳しくは拙著にて。

山川茂孝 (2022) 『コマースマーケティング 10のキーワードで楽しく学ぶリテールDX』インプレスR&D. Amazon Kindle版

[14] ファーストパーティーデータは、第三者を経由せず得られるデータのことなので、ここでは正確には「プラットフォーマーにとってのファーストパーティーデータ」となります。

[15] 日米のリテールメディアの現状については、以下の書籍に詳しい。

望月 洋志, 中村勇介 (2023) 『小売り広告の新市場 リテールメディア』日経BP. Amazon Kindle版

[16] ビュートピア “美容室の予約、スマホ普及で「ネットから」が「電話」を抜く” 2019年6月14日. https://www.beautopia.jp/12263

[17] 米国でもコロナ後のカーブサイドピックアップの利用は減っているようですが、大手リテーラーの約半数はサービスを続けています。

Digital Commerce 360 “Consumers return to stores maintaining BOPIS and curbside pickup capabilities” 2023年6月13日. https://www.digitalcommerce360.com/2023/06/12/consumers-return-to-stores-maintaining-bopis-and-curbside-pickup-capabilities/

[18] ネットショップ担当者フォーラム “しまむらや大手小売のEC事業に見る実店舗とネット通販のシナジー、店舗受け取りの効果” 2021年6月8日. https://netshop.impress.co.jp/node/8785

[19] ユニクロ”アプリな理由 ユニクロアプリでお買い物が便利になるんです” https://www.uniqlo.com/jp/ja/special-feature/app

[20] Mery “SHEIN TOKYOが原宿に誕生!商品を手に取れる、話題のショールームに潜入” 2022年11月14日. https://www.mery.jp/2440936

[21] 日経クロストレンド “b8ta、蔦屋、大丸…6つの「売らない店」検証 どこなら成果出る?” 2022年4月4日. https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00618/00003/

[22] 典型的なD2Cの事例としては以下のようなものが挙げられます。

[23] 代表的な事例としては、ネスレジャパンのドルチェグスト、キリンのホームタップなどが挙げられます。本体+カートリッジにすることで、よりお店並みの本格的な味を比較的安価に楽しめます。

ネスレドルチェグストサブスクリプション https://shop.nestle.jp/front/contents/machine/ndg/subscription/touch/

キリンホームタップ https://hometap.kirin.co.jp/

[24]  顧客の嗜好性データを活用した例として、商品のレコメンドが挙げられます。レコメンドによって、何もしなければ買われない商品を購入してもらうチャンスが生まれます。しかし、このエンジンが手法が機能するためには、商品の種類が多くなければなりません。

[25] ソニーがホンダとの共同開発EV(電気自動車)について、「iPhoneにタイヤがついたようなもの」と説明していたのが印象的でした。一方で、中国ではEVの買い替えが加速しており、まるでスマホを買い替えるようだと言われているそうです。

東洋経済 “ソニー・ホンダも志向、自動車の「走るスマホ化」” 2023年1月7日. https://toyokeizai.net/articles/-/644484

日本経済新聞 “スマホ化する中国EV Z世代、買い替え早く大量放棄” 2023年12月3日. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM261ZA0W3A121C2000000/

[26] 日本経済新聞 “テスラ、オンライン販売に全面移行 EV普及へ大量閉店” 2019年3月1日. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41949050R00C19A3TJ1000/

[27] クラウドを使った機能を利用するにはArlo Secureプランに加入する必要があります。米国ではハードウェア込みのサブスクリプションもあります。さらに、外出先での緊急事態対応など、Arloユーザー向けサービスが拡充されています。

Arlo Secure Plan. https://www.arlo.com/en-us/arlosecure.html (最終閲覧2023年12月11日)

[28] 現代の消費者の行動は「リキッド」型になっているという議論がマーケティングの世界では盛んになされています。「所有」から「利用」へのシフトはその一つと考えられています。

山本晶 “デジタル時代の消費者行動(7) 所有から利用へのシフト” 日本経済新聞やさしい経済学, 2022年7月7日. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1296Y0S2A510C2000000/

[29] 以下の論文の中で、久保田はリキッド化する消費の中では「顧客に対してより包括的な満足を提供するには,それぞれのブランドが独自に対応するよりも,複数のブランドが連携する方が有効かもしれない」と論じています。

久保田 進彦 “デジタル社会におけるブランド戦略” マーケティングジャーナル, 2019-2020, 39 巻, 3 号, p. 67-79. https://doi.org/10.7222/marketing.2020.008