コロナ禍特需も一段落し、ECの成長も落ち着いてきた感じがします。しかし依然として売り上げはプラス基調。成熟化した日本の経済においては、注目市場であることは間違いありません。

忘れてはいけない、ECは不便だということ

ECはとても便利だと皆さん思っています。しかし、実は不便もいっぱいあるのです。いくらECが伸びたとは言え、日本のEC化率は約10%。9割はリアル店舗で商品を購入します。その方が便利だからです。

そもそも日ごろ買い物をするお店は、大体が日常の生活動線上に位置しています。いつも使うお店は職場や学校の帰り道の途上であるとか、家の周辺(商圏)に位置しています。また必要なものをまとめて買うことができます。もちろんECでもたくさんの商品が買えることはわかっていますが、わざわざサイトにアクセスして、検索して、値段を確認し、高ければ他のECサイトを探して、といったことはとても面倒です。ECでの検索は、日常の買い物スピードに比べると、耐えがたく手間がかかり遅いのです。

不便なことはほかにもあります。送料です。年会費を払うと無料になるECもありますが、多くの場合、購入金額が小さいと送料の負担はお客さん側になります。送料を無料にするためには、たくさん買わなければならず、「少しの買い物」がとても難しいのです。安価なものでも、いくつかまとめて購入すれば送料無料にはなりますが、10品もカートに入れようと思えば何回も検索しなければならず、とても大変です。

店舗とECとの違い

ECが便利になるとき

ECが不便であること少し強調しすぎたような気もしますが、これらの不便さを理解すれば「ECが便利になるとき」も分かります。

まず、ECが苦手な「たくさんの種類の商品を買う」を克服することです。少ないアクションで商品を選べるようにする、ということです。家電などの高額商品は、大体が商品1点を購入するのでこれに該当します。食材もスーパーのように一つ一つ食材を選ぶのはECは苦手ですが、ミールキットのように必要なものをまとめて購入できるのであればECでも十分戦えます。さらに、それがサブスクになっていれば「選ぶ」手間も不要になります。ECでは「まとめる」ということはとても大切になります。またECは顧客データベースと直結しているので、お客様毎にカスタマイズされたおまとめ商品を実現するのも得意です。

商圏が「全国」というのもECの利点です。逆に送料がかかってしまいますが、上記のように「おまとめ」商品であれば購入単価が大きくなるので、送料問題は克服可能となります。

商圏が全国ということは、密度は薄くても一定数存在する需要に対応可能です。言い方が難しくなってしまいましたが、いわゆる趣味商材に向いています。例えば、ひところ「ミシン」が通販で良く売れた時期がありました。昔はミシンは一家に一台だったようですが、今ではミシンがある家庭の方が少数派になっているのではないでしょうか。そうなると街のミシン屋はどんどん廃業してしまいます。ただ手芸が趣味な人たちは確実に存在し、街のお店で買えないなら通販で、ということになります。ECショップとしても、全国のお客さんと商売ができますから、定番商品以外にマニアックな商品を仕入れる余力が出てきます。こうして趣味商材はどんどんEC化されてゆくことになります。

こうしてEC商材はEC限定となる

巨大ECモールやネットスーパーは、店頭商材もECで扱っています。しかし店頭の商品は「いろいろ手に取ってまとめて買ってもらう」ために小分けに、お安く提供されているものが多く、送料問題・検索問題にぶつかってしまいます。ただ、巨大ECモールやネットスーパーは配送網の整備やテクノロジーの活用によってこれらを克服してしまいます。(してしまうでしょう。)

残念ながらこのような芸当は、中小ECショップでは到底できません。そこで工夫をするわけですが、その出口の多くは「EC限定商品」になります。ひと昔は「通販限定商品」と呼んでいましたが、ECで扱うのにちょうど良い商品を設計し、EC特化で販売する、ということです。

その特徴は、次のようなものが挙げられます。

  • おまとめ型になっていて、商品の単価が店販商品より高い。
  • 店頭商品よりも少しマニアックな設計になっていて、「わかる」人に支持されやすい。
  • サブスク、頒布会など、続けやすいサービス設計になっている。

このような特徴は、「検索回数が少なく」「全国に広がった需要を救い上げやすく」「続けやすい」というECの良さを引き出す構造につながります。EC・通販では専用商材じゃないと戦えない、とよく言われますが、それは実はEC・通販のデメリットを克服する商品構造に理由があったのです。

No responses yet

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。