店舗の運営には売上データ分析は欠かせません。しかし、いきなりデータ分析をしろ、と言われてもどこから手を付けてよいか、よくわかりません。そこで、今回は、身近に存在する「レシート」を見ながら、データがどんなことを表しているか考察してみようと思います。自分の買い物の体験を振り返るとことでデータの意味も理解しやすくなりますし、またレシードに印字されているデータを見直すことで、どんなデータが背後で連携されているかも理解することができます。

レシート=領収書には、取引の履歴が克明に記されている

レシートのデザインは、いろいろな店舗によって異なります。しかし、どのレシートもお店とお客さんの間での取引の正式な履歴になりますから、正式なドキュメントとして必要な要素は含まれているはずです。以下の図はスーパーのレシートのイメージです。

多くのスーパーでは、レシートの頭の部分には以下のような情報が並びます。

  • 店舗名や住所など
  • 購入店舗、レジ番号、レシート番号、責任者番号

これらの情報を組み合わせることで、

「私がいつ、どこで買い物をして、どのレジで誰が打ち込んだか」

ということを確認することができます。いわば、お金を払った証拠です。レシート番号や責任者番号などはレシートの下部に印字されていることもあるようですが、少し大きなスーパーならほぼ確実にこれらの情報が印字されています。これらの要素を合わせることで、私が確かに買い物をしたことを確認・証明することができ、何かトラブルが生じたときもどこに責任があるかが明確になります。

これらの要素がそろっていない、例えばレジ番号や責任者番号が無い、というレシートも存在します。それらは、レジも一台しかなく従業員も家族だけ、といった小規模な店舗の発行したものが多いようです。

この一回の購入を、売上分析ではバスケットと呼ぶことがあります。ちょうどお買い物かごに商品を入れて会計をすます単位と一致して、どれだけ多くの商品を一回に購入するか、一回の買い物当たりの客単価を算出する際の単位になります。この例では、バスケットサイズ、すなわち一回の購入金額は、税込みで2,367円となります。

重要な買い物の中身、売上明細

買い物の全体の情報の後には、購入明細が続きます。どのような商品を購入したかの、商品を具体的に列挙します。複数のアイテムを購入したら購入個数も記載されます。

ここに表示される金額は、消費税込みの場合と、税別になっている場合があります。これはお店に寄ります。データ分析の際には、どちらを使っているか気を付ける必要があります。また軽減税率対象商品には※印などを使って判別できるようにしています。この印もお店によって異なります。

商品名ですが、レシートはスペースが限られているので、かなり省略されて印字されます。商品を購入したお客さんであれば、商品が手元にあるので、多少省略されていてもどれがどの商品なのかは判別できるでしょう。しかし、ネジや木片、植物の苗といった、どれがどれだかわかりにくい商材を扱っているホームセンターなどでは、商品実物とレシートの略称を突き合わせるのは結構骨が折れます。

そのため、一部のホームセンターでは、略称と同時にJANコード(より正確には商品についていたバーコードの番号)を記載するようになっています。これなら外観が似ているネジや苗でも、パッケージについているバーコードと照合すれば商品を特定することができます。薬品を扱うため、販売に厳格なルールの存在するドラッグストアでもコードを印字するところがあるようです。

ちなみに、レシートでは略称されていても、お店側のレジシステムには、商品名もJANコードも情報は保持されています。またレシート番号がわかればお客さんの購入履歴は即時に呼び出せますので、返品などが生じた場合も商品と購入履歴の商号は簡単に行うことができます。

顧客の買い物行動分析には欠かせない顧客ID

上記の情報は、お客さんがどこで何を買ったかを証明するレシートには欠かせない情報です。しかし、これだけではお客さんの日々の買い物行動の分析には不十分です。

例えば、お客さんはどれくらいの頻度で買い物をするのか、平均いくらくらい購入するのか、という情報を引き出すためには、たくさんある買い物履歴を「同一のお客さん」ごとにまとめる必要があります。そこで重要なのが「顧客ID」です。

上記のレシートの例では、顧客IDに相当するのが、ポイントの会員IDになります。IDは個人情報と紐づいているので、レシートではほとんどの桁をXXXXでマスキングをしています。流通・小売でのポイントプログラムは、フリーケント・ショッパー・プログラム(Frequent Shopper Program, FSP)と呼ばれています。

顧客IDは、必ずしもポイントに紐づいている必要はありません。ECでは、顧客IDとしてメールアドレスが用いられることも多く、ポイントプログラムがないECも多くあります。ただ、リアル店舗では、ポイントなどのメリットがなければわざわざ会員登録してくれないので、慣習的に顧客ID=ポイント会員のIDとなっています。

また、リアル店舗では、会員IDを持っていなくても買い物は可能なので、IDがついていない買い物履歴も存在します。日常使いをしている店舗なら会員登録しますが、たまにしか使わない店舗であれば登録はしません。

わざわざ自社のポイント制度をつくるのではなく、楽天ポイントやTポイントなどの共通ポイントを活用する企業も多くあります。お客さんはお店ごとに会員登録する必要がなく、買い物頻度が低いお店でもポイントカードを提示してくれます。こうすれば、POSデータはあっという間にID付になります。

注意点ですが、POSデータをID付にするためには、POSレジにポイント機能を組み込んでおくことが必要となります。不思議な気もしますが、実はポイントを貯めるだけなら、POSレジにポイント機能を搭載する必要はなく、専用端末をレジ横に置いておくだけで十分です。以前は共通ポイントをそうやって運用していることも多くありました。しかし、ポイントを使う、となるとPOSレジとポイントはつながっていなければなりません。(強引に人力でできなくはないですが・・・)お店側からは、ポイントはなるべく自分のお店で使ってほしいので、昨今では共通ポイントでもPOSレジに機能搭載をしていることがほとんどとなりました。

お支払いにもIDが付く時代

ポイントカードがPOSレジに組み込まれれば、キャッシュレス決済の機能もPOSレジに、と思いますが、そうは簡単ではありません。キャッシュレス決済は、共通ポイントより多くの種類が存在し、いちいちPOSレジに組み込んでいたら大変です。デバイスも、クレジットカード(IC読み取り)、非接触IC、バーコードなど、種類によってまちまちです。次々に出てくる決済サービスに、結局はレジ横の別端末で対応、というのは今でも頻繁に見られる現象です。

レシートの例では、決済手法は「電子マネー」としか書かれていません。また電子マネーの番号などもレシートには記載されていません。これはおそらく決済は別端末で行っている、ということを示しています。

決済はあくまで金額が重要で、何を買ったかは原則関係ありません。しかし最近の販促キャンペーンを見てみると、「〇〇をPayPayで買ったらキャッシュバック」というタイプが目につきます。このキャンペーンを実現するためには、お客さんが何を買って、どの決済手段を使ったかがちゃんと紐づいている必要があります。すなわちPOSレジが決済IDを認識する必要があります。さらに決済IDは、キャッシュバックの際にも必要になります。このような理由から、決済IDもPOSレジデータに紐づけされる時代となってきました。もちろん決済IDはお金に紐づいたとても大切な情報であるため、厳格に保管されています。

まとめ

今回は売上にまつわる情報を、レシートを見ることで推測する、ということをやってみました。レシートは我々の身の回りにたくさんあります。これらを見ることでどのお店がどのくらいの情報を有しているかだいたいわかります。ぜひ試してみてください。

なお、決済データと売上データの活用方法などについては、拙著「コマースマーケティング」にたくさん載っていますので、興味ある方はぜひ参考にしてください。

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