EC担当者であれば、誰もが検索順位を日々気にかけていることだと思います。ただ、最近、消費者の検索行動に少し変化が出てきていると感じている方も少ないのではないかと思います。果たして検索エンジン最適化(SEO)は、今までのままでいいのか?そんな不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

消費者の検索行動の変化は、実は複合的な要因が絡み合って起きており、全貌を理解するのはそう簡単ではありません。ただ、一つ一つ原因を探っていくことで、自分が今取るべき行動についてはわかるはずです。このブログでは、その複合要因を少しずつ解明していきたいと思います。

様々な局面で顕在化する、Google離れ

検索と言えばGoogleというのは、どうやらひと昔前の話のようです。例えば、米国の例ですが[1]、商品を検索する場合、消費者の55%はGoogleではなくまずAmazonで検索するそうです。また若い世代がランチの場所を探すとき、40%はGoogle MapではなくTikTokを使うそうです。Instagramがレストランサーチに強いとは聞いていましたが、米国の若者はTikTokに徐々にシフトしているようです。

日本においてもおそらく同様のGoogle離れは起こっていると推測されます。ではなぜこのようなことが起こるのか?自分の検索行動を振り返ると、その理由は概ね理解できます。

先ほどの「商品検索をAmazonから始める人が増えている」と現象ですが、例えば新商品をテレビ広告で知ったとして、Googleで検索する人と、Amazonを検索する人でどのような心理状態の違いがあるか、考えてみましょう。自分の場合で当てはめてみると、テレビ広告を見て「あの商品、どんな会社が作っているんだ?」と思えばGoogleを使います。しかし、「いくらだ?」となるとAmazonや楽天といったショッピングサイトで検索します。日本のメーカーのブランドサイトには、価格は表示されていないか、せいぜい「希望小売価格」があるだけです。本当の価格は見当たりません。商品スペックについても、ある程度はAmazonや楽天に載っています。それなら検索はAmazonや楽天で十分、と考えてしまいます。

レストランの検索でも、その背後にある心理状態、気分、が検索エンジンの選択を左右します。例えば、特定の店が既に決まっているなら、もしくは今の自分のいる場所から最も近くの店を探したければ、選択される検索エンジンはGoogle(もしくはGoogle Map)です。しかし、おいしいと評判の店を探したければ、食べログやぐるなびを検索したりします。その方が、クーポン情報もありますし…。

「評判の」ではなく「話題の」となるとどうでしょうか?「話題」となるとその話題をしている人々・コミュニティーが重要になります。おじさんの間で話題でも意味がない、と若者は考えるでしょう。そうなると威力を発揮するのが自分の同様の趣味・考え方をつなぐのが得意なInstagramであり、米国ではTikTokとなるわけです。

このように、検索エンジンに入力する「検索語」は同じであっても、その「検索語」を打ち込んだ時の気分、意図によって、求められる検索結果は異なるのです。それに伴い、検索エンジンは取捨選択されてしまうのです。

検索者の「気分」に対応する、Googleの戦略

検索需要を競合に取られてしまう格好のGoogleはどのような対策をしているのでしょうか?大雑把に言うと、検索している人の「気分」を推測して、検索結果を合わせている、ということになります。

例えば、Googleで「餃子」と検索してみてください。検索結果の最初は地図が表示されるはずです。これはGoogleが、「おそらくあなたは餃子店を調べてるに違いない」と思い、地図を表示したに違いありません。その証拠に、検索語が「胃痛」などを入れると、まず胃痛の原因について書いてあるウェブページが表示されるはずです。

今度は「餃子 冷凍」と入力してみてください。今度は、ECでお取り寄せ可能な商品の一覧がトップに来たのではないでしょうか?(過去の検索履歴や、PC・スマホの環境によって結果が異なる場合があるので、出てこなければごめんなさい。)この商品の一覧は、ショッピング広告と言われるもので、「この人は商品検索をしているに違いない」と判断された場合に表示される広告枠です。スマートフォンでは、通常の検索連動広告(ペイドリスティング)よりも上位に表示されることが多いようです。

ここで、一つ気になることが出てきます。いわゆる、ウェブページの検索結果はどこに出てくるのか?ショッピング広告や地図など、検索者の「気分」に対応したコンテンツの検索結果は表示されましたが、SEO対策をしているウェブページは、結構下の方に表示されてしまっていることに気づきます。せっかくSEOしたのに、ランクは上位なのに、表示は遥か下の方…ショックです。

自社ブランドのカテゴリーワードに対するGoogleの挙動をまず知る

Googleの検索結果画面の挙動は、カテゴリーによって異なります。「餃子」と同様に「エステ」という検索語ならば、おそらくお店を探していると推測ができますが、先ほどの「胃痛」なら読み物、「トライアルセット」ならEC化粧品と、推測されるおそらく探しているだろうコンテンツはカテゴリーによって異なります。このGoogleが考える「推測」のロジックを理解することは、検索マーケティングにとって非常に重要です。

例えば、先ほどの「餃子」の検索の場合は、地図の直後には餃子レシピサイトが表示され、続いて「他の人はこちらを質問」というヒントが表示されます。続いて「餃子とは」という餃子の定義を説明するサイトが表示されます。

このような並びを見ると、Google側も「餃子」という一語だけでは検索者意図が完全にはつかめておらず、意図の絞り込みのための「他の人の質問」が表示され、その後ろに食品キーワードではニーズの高い情報である「レシピ」を掲載している、ということが推測されます。

さて、この状況をSEOの観点で見るとどうなるでしょうか?

例えば、今までのSEOでは「餃子」ワードに対しての「自社の商品ページ」のランキングにこだわっていました。しかし、この例では、Googleの表示順位は「他の人の質問」の方がむしろ上位で、「餃子」の商品ページはずっと下の方にあります。

もし、「他の人の質問」を検索者がクリックしてしまうことが増えれば、「餃子」ワードのSEOの効果は減少してしまいます。さらに、そのそれらの質問のクリックの先に自社サイトはランキングされているかも課題となります。

このようにGoogleは、消費者の検索行動の変化に対応して、常に変化をしています。EC担当者もその変化に対応しなければなりませんし、またその原因となったGoogle外の検索エンジンの対応も行わなければなりません。

EC・リテールの必須、検索対策

EC事業者であれば、まずGoogleのショッピング広告対策は必須でしょう。今まで見てきたように、カテゴリー系のワードについては、コンテンツページよりショッピング広告が上位に表示させることも多くなっています。

ショッピング広告を掲出するには、Googleに商品情報を登録する必要があります。この商品登録のマネジメントを行うのが、Googleマーチャントセンター(Merchant Center)です。商品の登録には大きく三つの方法があります。一つが手動、もう一つがフィード(商品一覧表)による一括登録です。最も便利なのが、自動連係機能です。ECの仕組みに寄りますが、例えばShopifyには連携機能備わっており、一度設定すれば商品情報は自動でアップデートされ、手間もミスも減ります。

自動アップデートは便利ですが、一つ気を付けなければならないことがあります。それは、新規の顧客を獲得する際のランディングページの設定です。ECサイトの商品ページは、新規獲得用のランディングページに比べシンプルなコンテンツとなっています。初回限定オファーや、商品開発の際に得られたエビデンスなど、新規顧客に向けて詳しく説明したいコンテンツが挿入されており、ランディングページはどうしても長くなります。そのためECサイトの商品カタログとは別に管理されていることが通常です。

このようなランディングページをショッピング広告でも使いたいのであれば、自動更新とは別に手動(もしくはフィード)で新規顧客向けの商品とランディングページを登録しなければなりません。登録自体はとても簡単で、新規獲得用商品数も多くないので、活用すべき手法です。

Amazonなど、Google以外の検索エンジンの対策も必要です。ただし、EC事業者がAmazonで検索対策するためには、そもそも出品をしなければなりません。Amazonで店を構えるのは、それなりにリソースが掛かります。そもそも出店すべきか否かを含めての検討が必要になります。

メーカーの場合は、もしAmazonで商品が扱われているなら、是非検索対策をすべきです。主な活動は商品ページの最適化です。タイトルや説明書き、A+と言われる商品の詳細情報をわかりやすく、かつ検索されやすいものに書き換えていく作業になります。商流の状況などによって作業手順が異なるため、ここでは詳細は割愛します。

ただ、Amazonを開いて自分の商品名や、商品のカテゴリーを検索すれば、自社の商品ページが競合に比べ検索順位が上なのか下なのか、簡単に確認ができます。是非確認してみてください。

Instagram、TikTok、Twitterについては、少し話が複雑です。いずれもSNSという特性から、コミュニティーやコンテクストと合わせての施策設計が必要となります。ここでの議論は難しいので、いずれまたどこかでお話したいと思いますが、ECの観点で一つおさえておきたいのが、これらのSNSとECサイトの連携機能です。

ECとSNSを連携させる上で一番面倒なのは、商品情報(商品ページへのリンク)のメンテナンスです。そこでECツールベンダー、SNS各社は連携機能を日々拡充しています。ShopifyのInstagram Shopping連携[2]、TikTok連携[3]などがそれにあたります。Googleと異なり、SNSはECサイトをわざわざ巡回してくれません。そのためSNSで商品情報を展開するための準備が必要となるのです。

まとめ

検索エンジンの最適化(SEO)は、ウェブマーケティングで大変重要な要素の一つです。今まではSEOはGoogleの自然検索のページの順位を上位に引き上げることを意味しました。しかし、Googleは日々進化しており、リテールメディアが伸長している昨今、商品カテゴリーキーワードのGoogleの検索結果の上位は、ブランドのページの検索結果の上部をショッピング広告が占めることが増えていました。すなわち、SEOはもはや商品ページの検索ランクを引き上げるだけでは不十分になってきた、と言うことになります。

Googleの外側に目を向けると、今度はAmazonやInstagramを筆頭に、さまざまな目的別検索エンジンがプレゼンスを発揮しています。特に、EC事業者にとってはAmazonは無視できないECプラットフォームです。ユーザー特性を理解し、必要があればAmazon出品はありうる選択です。メーカーにとっても、Amazonは商品の卸先であることが多く、商品詳細ページの充実とメンテナンスは大切な活動となってきています。

今後は、検索対策と言えば…、Google+αを考えていく時代になったと言えます。

参考文献

[1] Google exec suggests Instagram and TikTok are eating into Google’s core products, Search and Maps | TechCrunch

[2] ShopifyとInstagram(インスタグラム)の連携方法を解説します! — 設定【2022年版】 – Shopify 日本

[3] ShopifyとTikTok For Business(TikTok広告)の連携と広告設定方法を解説 | 【公式】TikTok for Business: TikTok広告 (tiktok-for-business.co.jp)

コマースマーケティング
https://amzn.to/3EwNMtB

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