化粧品ネット購入減、ドラッグストアは引き続き増加

マイボイスコムは、2022年8月に実施した「化粧品に関する調査(第7回)」の結果を公表した[1]。それによると、一昨年実施された第6回調査に比べ、スキンケア・化粧品の普段の購入場所として、インターネット通販が減少に転じたのに対し、ドラッグストアは引き続きスコアを伸ばす結果となった。新型コロナの揺り戻しが一つの原因と考えられるが、デパート、バラエティショップなど他のリアルチャネルは横ばい、もしくは減少しており、ドラッグストアの一人勝ちの様相だ。

商品の情報収集についても、リアル回帰が鮮明だ。「店頭のPOP」「製品のパッケージ」が伸長。一方、「テレビ番組・CM」は減。

オンライン媒体としては、「ブランド・メーカーのWebサイト」が伸びた。年齢別では、「Twitter、インスタグラム、YouTubeなど」は女性若年層で比率が高く、女性10・20代では1位。女性30~40代では、「商品比較サイト」の比率が高くなっている。なお、性・年齢別などの集計については、マイボイスコムのサイトで依頼(有料)が可能[2]。

[1] 化粧品はどのSNSを見て選ぶ?購入をする場所は?マイボイスコムが最新の消費者動向レポートを公表|ECのミカタのニュース記事です (ecnomikata.com)

[2] 化粧品に関する調査(第7回)/アンケートデータベース(MyEL) (myvoice.jp)

アマゾンのアイスタイルへの出資、通販新聞の見方

通販新聞での特集記事が興味深い[3]。ECサイトとしては、売上高や品揃えでは圧倒的なアマゾンだが[4]、化粧品に関しては弱点も目立つ。数多くのブランドが存在する中、それぞれの独自性を打ち出しやすいモール型の楽天市場は、化粧品分野ではアマゾンを上回っていると言われる。「出店者がサイトで独自の工夫を行う楽天に比べ、アマゾンは商品ページ作成における自社の負担が大きい」のだ。結果的に、Googleにおける検索順位では、楽天がアマゾンを上回ることが多いのだと言う。

人気の韓国コスメで存在感を示しているのはeBay傘下のQoo10だ。セール時期に他のプラットフォームでは 買えない韓国コスメもQoo10では買えた、といった評判が広がり、韓国コスメならQoo10というイメージも定着してきた。

一方、出資を受ける側のアイスタイル、アットコスメだが、「商品数は約36万件。市場に流通する化粧品をほぼ網羅する。99年の創業来、累計のくちコミ数は1810万件。その数は膨大で他を圧倒」しているという。アマゾンが苦戦するロングテールの商品情報と、検索エンジン順位に影響の大きい口コミコンテンツを同時に獲得できる。商品の比較やランキングも検索順位を押し上げる。実際、多くの化粧品関連キーワードでは、アットコスメは楽天、Qoo10、アマゾンよりも上位表示されることが多いようだ。

既にアマゾン内に「@cosme shopping(仮称)」を構築する、と発表されており、出資の効果は思いのほか早く目に見えるものになるかもしれない。

[3] 通販新聞社 / 「くちコミ」の価値<アマゾンが「アイスタイル」に資本参加> SEO対策などPF間競争優位に (tsuhanshimbun.com)

[4] 通販新聞社 / 上位300社で7兆144億<月刊ネット販売調べ 2021年度のネット販売市場> 前年比14.2%増も、伸び率鈍化 (tsuhanshimbun.com)

米国、コマース先端企業の次の一手、いろいろ

米国のコマース先端企業の次の一手が興味深い。ECの巨人であるアマゾンだが、昨今噂されていた「第二のプライムデー」を実施の可能性が高まっているようだ[5]。アマゾンからは正式な発表はないものの、Digital Commerce 360によれば、インフレ懸念の高まる今、年末のホリデーシーズンの前にセールを組みたいということのようだ。一方で、年末に向けて商品確保に奔走するセラーも少なくなく、第二のプライムデーを見送る可能性も残っていそうだ。

アマゾンが正式に発表した、セラー向けメールマーケティング機能[6]は、当面米国のみのようだがセラーにとっては朗報だ。このメール機能は、セラーのロイヤル顧客に対して無料でメールが送ることができる仕組み。RFM上位の顧客に対して再アプローチできる機能で、現在米アマゾンにおける「ブランドフォロー顧客」の考え方の拡大版のようだ。セラーにとっては、顧客にアプローチできる手段が増えるのはありがたい。

対するウォルマートだが、EC上でバーチャル試着ができる機能“Be Your Own Model”を提供する[7]。自分の写真をアップロードすると、その写真に洋服が合成され画面表示される。昨年買収したZeekitの技術で、現在の“virtual try-on”サービスの拡張機能となる。ウォルマートに関しては、消費者向け銀行口座サービスを開始する、と言うニュースも見逃せない[8]。

アマゾン、ウォルマートに比べると小粒だが、食品ECのラストワンマイル競争で存在感のあるインスタカートの動きも注目だ。インスタカートは、買い物代行サービスという位置づけで、流通業であるアマゾン、ウォルマートと立場が異なる。そのインスタカートが、独立系スーパーなどにECプラットフォームを提供するRosieを買収した[9]。大手流通が行うBOPISやネットスーパーは、確かに品ぞろえは豊富だが画一的とも見える。一方で独立系流通は、独自の品ぞろえが売りではあるがITや配送網への投資は難しい。インスタカートの今回の買収は、独立系スーパーを束ねるRosieのITインフラとインスタカードの配送網を統合し、大手流通にはできない独自の品ぞろえで自社の足固めを行おうという動きと見える。ECの世界での生き残り戦略として注目したい事例だ。

[5] Amazon plans Prime Day-like sales event next month (digitalcommerce360.com)

[6] Amazon expands email marketing capabilities for sellers (digitalcommerce360.com)

[7] Walmart lets shoppers upload photos to virtually ‘try on’ apparel (digitalcommerce360.com)

[8] Walmart Banking: Retailer is Launching Digital Checking Accounts – Bloomberg

[9] Instacart Makes Another Transformative Acquisition | Progressive Grocer

以上

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