消費者保護へECの顧客ナビゲーションの見直し進む予兆

ECの利用の増加に伴い、消費者を惑わす広告・マーケティング手法への規制強化も進んでいる。今まではフィッシングなど詐欺的な行為に対しての規制の議論が中心だったが、さらに「意図的に定期に誘導する」「離脱しにくいように不便にする」などといった行為についても規制の議論が高まっている。これらの紛らわしい、消費者へ不利益をもたらす手法を、ダークパターンと呼ぶ。

日経新聞では[1]国内6割のサイトでダークパターンが存在するとレポートされており、その中には健康食品の大手サイト、ECプラットフォーマーの名前も連なる。日経自身もグループのウェブサイトにダークパターンが存在することを確認、改善を表明している。

米国カルフォルニア州ではダークパターンを法案で規制しようとする動きがある[2]。また世界的な情報処理系の学会でも議論が高まっている[3]。紛らわしいあおり広告は古くから存在するが、インターネットではA/Bテストの普及に伴い、企業側は意図せずダークパターンを作り出している危険性があることも指摘されている。

[1] 消費者操る「ダークパターン」 国内サイト6割該当: 日本経済新聞 (nikkei.com)

[2] オンラインでの行動を操る「ダークパターン」、その規制が加速する | WIRED.jp

[3] Dark Patterns: Past, Present, and Future – ACM Queue

オンとオフ、両者を結ぶ取り組み、各方面で活発化

オンラインとオフラインを結ぶOMOの話題は毎週のように登場しているが、今週も興味深い記事があったので紹介する。コロナのリアル店舗への影響が深刻な米国では、リアル店舗をブランド体験の拠点として再定義、機能強化を図ろうとする動きが多くのブランドで活発化している。しかし一方でかつてのようにリアル店舗で新しいブランドとの出会いが減るとも懸念されており、オンラインでのブランドの出会いを強化しようとする機運も高まっている。このオンとオフをつなぐブランド体験を目指したものがFacebookの唱えるdiscovery commerceである[4]。

日本では百貨店の動きが活発だ。長年OMOに積極的だったパルコはECの売り上げが前年比4倍に。店員に寄る丁寧なEC誘導がお客様の日常的なアプリ活用につながったようだ。また大丸松坂屋はMakuakeと連携し、地方産品催事をオンラインで実施。逆にMakuake商品をリアル店舗催事で展開するなど、オン・オフの買い物体験を組み合わせた展開で成果をあげている[6]。

[4] In stores or online, the future of retail is experience | Ad Age

[5] パルコ、ECが前年比4倍超 店舗の落ち込みを救った公式アプリ:日経クロストレンド (nikkei.com)

[6] ライブコマースで売上7倍 オンライン展示会や催事で成果が続出:日経クロストレンド (nikkei.com)

進むリテールEサイトの媒体化

リテールサイトの広告化が加速している。コロナによるECの拡大により米国ではアマゾンの広告事業が50%増加、同様にウォルマートもトラフィックが50%増加しているとのこと[7]。さらに、米国の主要チェーンストアであるHome Depot, CVS, Walgreens, Krogerも広告事業に参入している。

我が国においても、アマゾン、楽天といったECプラットフォームでの広告ビジネスは拡大している。さらにはビックカメラやヤマダデンキ[8]といったトラフィックの多いECサイトでも広告事業の参入が相次いでいる。今後も購入コンタクトポイントに近いECサイト上での広告のニーズは高まっていくだろう。

[7] Digital media budgets prioritize Walmart, Amazon (digiday.com)

[8] ヤマダデンキ、サイバーエージェントと広告事業参入: 日本経済新聞 (nikkei.com)

宅配ラストワンマイル競争、テクノロジー活用に活路

ECビジネスのラストワンマイル、すなわち消費者への配送をどのように解決するべきか?今週もニュースが飛び交った。ギグワーカーを活用し、新しい事業展開をスタートするのはエディオン[9]。人材不足の宅配に依存するのではなく、ウーバーイーツインフラを活用するという。

一方で置き配を推進しようとするのがアマゾン。マンションのオートロック問題を解決するパートナーとしてGoldKeyとのパートナーシップを発表した[10]。アマゾンは同様のパートナーを「Key for Business」というプログラムで提携ネットワークを広げようとしている[11]。なお同様の仕組みはヤマト運輸など物流企業も導入を進めており、「鍵」の取り合いが熱くなりそうだ。

[9] エディオン/ウーバーイーツで家電の配送実験、東京・大阪で開始 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

[10]  GoldKey、Amazonの置き配「Key for Business」認定パートナーに|ネット通販情報満載の無料Webマガジン「ECzine(イーシージン)」

[11] アマゾン、オートロックを“スルー”できる置き配「Key for Business」を国内開始…物流パンクの低減なるか? | Business Insider Japan

EC中心のビジネスモデルで大躍進、Anker JapanのCOOインタビュー

D2Cモデルで急成長を遂げたAnker。オウンドだけでなく、アマゾンなどのECプラットフォーマーを巧みに活用した手法はヘッドレスコマースの先駆けとして注目されている。日本においても7年間で200億円まで成長。そのAnker JapanのCOOのインタビュー記事が今週掲載されている[12]。またブランド体験の拡張の一環として直販のリアル店舗の拡張も進めており、4月1日より新会社が発足している[13]。オン/オフ統合したD2Cモデルとして目が離せない。

[12] 日本進出7年で売上200億突破のアンカー・ジャパン、“成功の裏側”と多ブランド戦略の意図:家電メーカー進化論(1/9 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

[13] アンカー、直営店事業を担う新会社「アンカー・ストア」設立 (2021年4月1日) – エキサイトニュース (excite.co.jp)

Googleのリサーチャーが消費者の購買行動を解説します

Google UKのリサーチャーが消費者行動についてビデオ解説[14]。(英語ですが、字幕ONにすれば内容だいたいつかめると思います。)すべてをデータで語ると思われがちなGoogleだが、研究開発チームは心理学も活用した消費者行動分析を行っている。フルレポート([15]からダウンロード可)では、消費者の意思決定モデルやGoogleで行った心理実験、各種検索の時系列データなどを用いて考察が展開されており、興味深い。

[14] What behavioural science research tells us – Think with Google

[15] The ‘messy middle’ and purchase behaviour – Think with Google

アプリ、スマートレジ、キオスク端末、各種デジタル技術でオン・オフ統合が加速

デジタル技術を使ったオン/オフ統合の動きは今週も活発。スーパーのショッピング体験をより豊かにすると期待されるスマホアプリだが、その使い方は企業によって異なるようだ。西日本を中心とするイズミは、決済機能を新たにアプリに搭載し、クーポンや各種キャンペーンと統合[16]。一方三井物産はレジ機能を軸にアプリを開発[17]。ドラッグストアをはじめ流通チェーンに提供を開始した。

飲食業界ではスシローが元気だ。アプリによる予約、各種店内端末を活用し顧客の利便性、エンタメ性を向上。コロナ禍にありながら増収を実現[18]。デジタル技術が戦略を後押しした好例と言える。

[16] イズミ/公式アプリ「ゆめタウンアプリ」全面リニューアル | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

[17] 買い物客、スマホがレジ 三井物産がアプリ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

[18] スシロー、緊急事態でも増収 都心攻勢・自動化・非接触: 日本経済新聞 (nikkei.com)

業界トレンド

Salesforceが恒例のECトレンド調査を発表[19]。国内の各業種の販売動向は[20]にて。

[19] コロナ禍で購買行動のデジタル化進む–生活必需品もメーカーから直接購入 – TechRepublic Japan

[20] 月次 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

以上

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